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・・・・・・

空気ひとつ動かない、耳に痛い程の静寂が部屋を満たす。

外で聞こえる鳥の声や人々の喧騒ですら、この家のこの部屋には入り込めないかのようだ。

結界はうちに張ってあるようだが、また別の結界ができているとすら思えてくる。

・・・・・・

誰一人口を開く事のない、この緊張状態がもう何時間―――いや、時計を見る限りは10分とたっていないのだろうが。

時間の感覚さえ狂うような空気が、俺の神経を擦り削っていく。

セイバー、遠坂、アーチャー、イリヤ。

対峙するは藤ねえに桜。

そして俺はどちらともつかない真ん中の位置。

・・・・・・飯が冷えちまう。























――――――――<異常への来客者>――――――――





























「藤村大河さんに間桐桜さんですね? お話は聞き及んでおります。
 此度はこの家に何のご許可もなく上がらせて頂いた無礼、申し訳有りません」

と、最初に口を開いたのはアーチャーだった。
セイバーと共に頭を下げて、深々とお辞儀をする。

「あ、いえ。どうもご丁寧に」

藤ねえが会釈し、桜が困惑しながらも同じように頭を下げる。
それで少しだけ空気の緊張が取れてくれた。

『藤ねえ、桜。今日からうちで下宿する四人だ』

と、紹介した時の二人の反応は、思っていたものと違った。
桜はともかく、藤ねえは怒りを露にして暴れだすかと思っていたのだが。
硬直、なんてレベルを超えて硬質化して、身動き一つしなくなったのだ。

思えばその理由はアーチャーなのだろう。
見た目は背広姿で、二十歳後半の成人男性。
神妙な面持ちで床に座しているその姿は、信用に足る人物に十分見えるからだ。
・・・まあ人によってはその姿から、ちょっとした夜のお店の人を連想するかもしれないが。

まあともかく、女性だけ下宿するとなると問題だろうが、アーチャーという存在が良い方向に作用してくれたらしい。

「この家の家主である衛宮士郎君のご好意により、一昨日より下宿させて頂く事になりました。
 先ほども申したように、家族の方に許可なく行った事、申し訳ありません」

「えーと、とりあえずはそれはともかく。
 何故にこのような事情になったかをお聞きしたいんですが」

アーチャーの至極常識人な言葉に、未だ困惑しているのか微妙に変な口調の藤ねえ。
とりあえず君付けは気持ち悪いかもしれない、アーチャー。






さて、アーチャーが考えて、提案した案はこうだ。


セイバー、アーチャーは元々孤児院にいた。
互いの親は事故か何かで亡くなったらしく、物心つく前からそこに居た。
その時から二人は仲が良く、家族のようにそこで暮らしていたらしい。
しばらくして、引き取り手の居ない二人の前に現れた人物がいた。
衛宮切嗣。
俺の親父にして、放浪癖のある風来坊だ。

一時的にそこの孤児院に暮らした切嗣は、特にこの二人と親交を深めたらしい。
しばらくすると、切嗣は彼らに一つの案を出した。
知り合いの所で暮らすつもりはないか、と。
二人はそれを承諾し、孤児院を出る事を決めたのだ。

それがイリヤの家、アインツベルンだった。
貴族の家柄故か、姓までは貰わなかったものの、彼らはそこで暮らす家を手に入れた。

だが気づけばふらりと、切嗣はまたどこかへ行ってしまったらしい。

月日が経ち、その家にも慣れてきた時に聞こえてきた話が、

「切嗣氏が亡くなったとの報だったのです。
 前々から彼の恩返しや、彼より聞いた日本への憧れがあり、日本で暮らすことを考えていたので・・・
 今回彼のお参りと同時に、この地へ居を据える事を決めたのです」

ご愁傷様です、と再び頭を下げるアーチャー。
その表情は真剣に切嗣の死を悲しみ、残念がっていた。
正直演技とはとても思えない。

「ですが慣れぬ地で暮らそうにも、我々には此方の常識というものがまだ足りません。
 その為にまずは縁のある遠坂の家へと住まわせていただき、
 その後余裕ができてから家を持とうと考えていたのですが・・・」

「連絡の行き違いがあったらしくて、わたしに彼らの話が届いていなかったんです。
 それだけなら良かったのですが。
 実は今、わたしの家を全面的に改装を行っているんです。
 古い建物ですから、いろいろな所にガタきてしまって・・・
 わたし一人ならばと思い、改装が終わるまではホテルで暮らそうと考えていたのですが。
 そのタイミングで彼らがわたし家を訪ねてきてしまいまして」

アーチャーの言葉を継ぐように、遠坂がそれらしい事を並べていく。

「彼らをそのまま追い返す、ということなどできませんし。
 だからといって四人でホテルで暮らすとなりますと、いかに安値の場所であっても、かなりの額になります。
 どうするかと困っていた所、偶然通りかかった衛宮君が相談に乗ってくれまして。
 それならばうちを使え、と言ってくれたんです」

むむ、と藤ねえが唸る。
確かに士郎っぽい発言ねー、としぶい顔をする。

「あまり面識の無い衛宮くんからの提案には驚いたのですが、
 話を進めたところ、彼らが探していた人物が衛宮くんのお父さんということで。
 学生でホテル暮らしもどうかと思っていましたし、
 衛宮くんも彼らの話が聞きたいということで、ご好意に預かる事にしたんです」

むむむ、と藤ねえが再度唸る。
困惑はしているし、疑ってもいるが・・・
アーチャーと遠坂の言うことに納得出来てしまうため、反論の余地がないのだろう。
しばらく唸りつづけて、

「しょうがない、認めるしかなさそうね」

と、ため息をついて言ってくれた。

「藤村先生、いいんですか?」

「う〜ん、こうもどうしようもない事情だとね。
 アーチャーさんみたいなしっかりとした保護者さんもいらっしゃるし、
 切嗣さんのお参りに来たんじゃ無碍にもできないでしょ?」

桜の心配そうな問いに、困ったように応える藤ねえ。
正直二人に嘘をつくのは嫌だが、聖杯戦争なんてものに二人を巻き込むわけにも行かない。

「藤ねえ、桜。連絡しなかった俺も悪いけど、こういう事情なんだ。
 悪いけど、分かってくれ」

俺のどうしようもないわがままに、

困惑した表情でありながらも、コクン、と二人は頷いてくれた。

















で、一度納得してしまえばもういいのか。
もしくは食事がこれ以上冷めるのが嫌だったのか、藤ねえはいつものように食事をはじめた。
むしろ人数が増えた食卓に対して逆に喜びを感じているのか、上機嫌のようにも見えた。
桜は未だ納得がいっていないのか、表情は晴れてはいなかったが。

「それで、セイバーさんは何歳なの?」

は? と藤ねえの声に疑問符を上げて固まるセイバー。
今まで黙々と食事を食べていた分、油断していたのだろう。
それにしてもセイバーは箸の使い方が上手い。
イリヤなんて最初は頑張っていたが、途中から諦めてフォークとナイフに変更してしまった。
初めてとは思えないほどの箸使いである。
ちなみにアーチャーは上手い、というレベルではなかった。
違和感がないのである。
まさに自然体。
日本人がだた食事をとっているかの如く、淀みや迷いが一切ない箸捌き。
さすが英雄と呼ばれる人物達だ。
・・・こんなことで驚いてどうするんだ、俺。

「はあ、確かシロウや凛の一つ下と記憶しておりますが」

驚いた。
確かにセイバーは年上のような落ち着いた雰囲気を持っているが、
もっと年の差が離れていてもおかしくないと思っていた。
いやまあ、確かに自分以下だとは思っていたが。
と、言うより過去から呼び出される英霊に、年という概念があるのだろうか・・・?

「ふんふん。で、セイバーさんは日本で暮らしに来たんだよね?」

「はい。あくまでも希望に過ぎませんが、ここで暮らすことは私たちの望みでもあります」

それを聞いた藤ねえは嬉しそうに手を合わせると、

「そっかー。じゃあうちの学校を見学しにくる?」





・・・・・・・





『は?』

ここにいる誰もが理解できないような、ぶっ飛んだ事を言い出した。






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