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『あ、全力で歌うわよ!』

「カラオケなんて何年ぶりかな。そもそも来た事自体があんまりないけど」

『思い出に浸ってないで、今歌う曲を考えなさい。
 ぼやぼやしてるとわたしが10曲埋め尽くすわよ!』

「この時代のカラオケに10曲制限なんてないと思うが。
 遠坂の歌なら聞いてるだけでも楽しめると思うけど、まあせっかくだし俺も何か入れるか」

『先行は貰うわよ・・・・・・! 士郎、【162156】よ!』

「曲番号で覚えてるとかいつ時代の人間だ、曲名か歌手名で言ってくれ。
 というか通常会話はマイクを置いて言うように」
















【デートしよう! その3】

















「あ゛ー、喉痛い」

「そりゃあれだけ歌えばな。
 最初の数曲はともかく、後半は殆ど遠坂一人で歌ってたじゃないか」

「ふん、曲を入れない方が悪いのよ」

「曲を入れる作業はしてたけどな、だれかさんが自分で入力しないから」

「あ、あれは・・・・・・! だってこの時代のカラオケがあんな風になっているとは思わなかったんだもの。
 リモコンじゃないし、ボタンは殆どなくて平たい画面だけだし、なんかよくわかんないし」

「おい未来人」

タッチパネルを全く知らない日本人など、この時代ですら絶滅危惧種だろう。
ああいうものは感覚で使えるようになっているのだから、恐々とせずに使い出せば簡単な筈なのだが・・・・・・
『触ったら壊れる』という感覚を持っている以上、遠坂にああいったものは一生なじまないのかもしれない。

ああいや、一生はもう終えたんだな、俺ら。
つまり一生じゃ足りない訳だ。

「ああもう、その辺は忘れてどこか店に入りましょう。
 咽休めに何か飲みたいわ」

「じゃあランサーがバイトしてる店に戻るか? 紅茶ってノドにいいって言うし」

「さんざんからかった後だし今日は入りにくいわねえ。
 まあ、とりあえずショッピングモールに入りましょうか。
 あそこなら飲食店に困ることはないでしょう」



















「あら」

「あら」

と、奥様的な台詞で出会ったのはまさしく新婚さんの彼女。

「こんにちわ、キャスター。
 御一人? プラモデルだなんて独身女の買い物みたいですわね」

「ごきげんよう、ジャグラーさん。
 そちらは他人のサーヴァントを連れまわして、まるで愛人の横恋慕のようですわよ」

うふふふふ、とにこやかに挨拶を交わす二人。
生前に見た光景にやたらと似ている。
魔女二人が揃うとこんなものなのだろうか。
ふと気付いたが、ここには二人も『奥様は魔女』を体言する人物がいる訳だ。

「まあなんだ、出会い頭になんだ君達は。
 同じ地に住むもの同士、少しは仲良くできないのか」

「あら、こんなものは本当にただの挨拶に過ぎないわ。
 魔女同士が諍いを起こせば、もっと暗くて陰湿な世界が見えてよ」

「そうよ、軽く三世代は引き継ぐ呪い程度は覚悟しないと」

先ほどとは打って変わって、やたらと息の合った『魔女の呪い講座』をしてくれる二人。
うん、別に聞きたくはなかったけどな。

「それでキャスター、貴方のマスターはどうしたの?」

「今日は趣味の買い物ですから。
 それに宗一郎様はお仕事です・・・・・・休日にも仕事があるなんて忌まわしい国ね」

それはこの国に限ったことではないと思うけど。
いや、案外宗教上の理由とかで休みが確定されてる所はあるのかもしれない。
世界中は廻ったつもりだが、まともに“社会”が構築されている場所に余り赴く機会がなかったのでなんとも言えないが。

「それは・・・・・・布地?」

「これ? ええ、想像に合った物がなかったものだから、一から作ってしまおうと思って」

「へえ」

そう言って紙袋の中を覗き込む遠坂。
挨拶こそあんなものだが、この二人は以外な事に馬が合う。
偶に俺の知らないところで合っていたり、互いの家を行き来しているようだ。
凛の方はキャスターを毛嫌いしているようだが、こちらの遠坂はと言うと――――

『趣味が合うのよ』

という話しだが。
さて、それがどんな趣味なのかは聞いていない。

「黒の布地に、白のレース、ね。
 ねえ、デザイン画とかは今持ってる?」

「あるわよ」

仲睦まじく寄り添う二人。
流石に覗き見るような事はできないので、メモの内容までは此方には判らないが・・・・・・

「・・・・・・いいわね、これはどっちの?」

「アインツベルンの方よ。セイバーでもいいけど、あの子はこっちの方が・・・」

ニンマリ、という擬音が似合う微笑みをしながら、楽しそうに語り合う二人。
・・・・・・メモの中身は判らないが、たぶん誰かを不幸にする品物なのは確かだろう。

「――――じゃあ二人は来週末にでも連れて行けばいいかしら?」

「ええ、それまでには用意しておくわ。
 そちらもこれらに合う物を任せるわよ」

「もちろん、新作をお披露目するわ」

なにやら話しが纏まったのか、悪代官と越後屋が笑いあう。
まあ、まがりなりにも正義の味方を名乗っている身としては、被害を最小限に抑えられる用に善処しよう。
なんだかこういう場面の方が正義の無力さを感じる気がするなぁ。

「それじゃあ、わたし達は行くわね。キャスターは?」

「別の店に布地を買いに行くわ。そういう貴方達は?」

「わたし達は継続してデートよ」

ピキーンと、空気が固まる。

「へ、へえ。まさか本当に逢引だとは思いもしませんでしたわ。
 サーヴァントであり、魔術師である以上、立場というものがありますから。
 軽々しくそういった無駄な行為にひたるなんてまず想像できませんし」

「あら、では立場ある行為とは、模型を買いあさって無計画に積み上げる事を言うのかしら?」

「うっ、それはただの趣味だけではなく、術者たるもの手先の器用さは常に研ぎ澄ます為であって・・・」

「手先の器用さを鍛えたいのでしたら、料理の一つでも覚えればよろしいのではなくて?
 それに夫婦たるもの、身を寄せ合うのは自然の事ですわ」

「・・・・・・」

「いくらオシドリ夫婦だとしても、刺激がなくては熱も冷めてしまいかねません。
 貴方も一人の妻なのですから、伴侶とは当然デートの一つや二つ・・・・・・
 あら、もしかして・・・・・・ごめんなさい、配慮が足りなかったわ。
 同じ夫婦とはいえ、付き合い方は人それぞれですものね」

「うぅぅぅぅぅっ」

ベシーン、と叩き付けられる白手袋ならぬハンカチ。
え、なんで俺に?

「お、覚えていなさい!
 次に会う時には、宗一郎様とのらーぶらぶな日常生活をたっぷりと言い聞かせてあげるわ!」

「望む所よ。ならわたしは日々のこゆーい生活を嫌と言うほど教えてあげるわ!」

「きーっ!」

走り去っていく希代の魔女。
この後、葛木宗一郎氏がどんな苦労をしたかは想像に難くない。主に夜。

「・・・・・・おい、遠坂」

「あー、楽しかった。何?」

「このハンカチ、顔に張り付いてとれないんだが」

「―――流石ね、一筋縄ではいかない女だわ」

「真剣な声色はいいが使いどころ違うと思うぞ。あと早く取ってくれ。
 なんか隙間無くなって呼吸苦しくなってきた」

魔女同士の争いは、本人達ではなく廻りが不幸になるというお話。
























「ん〜っ! いやー、遊んだわね!」

深夜、眠らない街の死角―――つまりはとあるビルの屋上。
経済成長が故に摩天楼と化した街だからこそ、人々は空を見上げない。
星は見えず、人という障害物とネオンの輝きに目を奪われ、存外こういう場所は気付かれないものだ。

「日ごろの鬱憤を一気に晴らせた気分ねっ」

「俺は一日中ジェットコースターにでも乗ってた気分だよ・・・・・・」

映画やらカラオケだけでは飽き足らず、この街にある娯楽は全て見回ったんじゃないかと思う程にあちこちを散策した。
サーヴァント故に肉体的疲労は無いに等しいが、精神的にはギリギリの所まで消耗させられた。

「聖杯戦争中より疲れた」

「ふん、わたしの前では聖杯戦争の印象ですら霞んでしまうというわけね!」

うん、まあある意味霞むかな。
というか聖杯戦争の方も、しっちゃかめっちゃかにした原因の一つだし。

「それにしても随分買ったな」

両手に持っている紙袋数個を持ち上げてみせる。
ショッピングモールに入って数十分、気付けば両手一杯の紙袋を抱えていた遠坂がいたもんだから驚いたというか絶望した。

「あの時は飽きれて物も言えなかったけど、一体何を買ったんだ。
 もしかして全部遠坂の服か?」

「残念、半分はハズレ、服は当たりだけど。
 残り半分は士郎の服よ」

「・・・? 俺の?」

「ええ、誰かさんは最低限の服しか買わないじゃない。
 こうやってわたしが用意してあげないと、おしゃれ一つできないでしょ?」

まるで引きこもりがちの子供を持つ親みたい、なんて冗談交じりに言われてしまう。

ちなみに我々の子供はその様な心配はなかった。
遠坂の教育の賜物か、世間体というものをよく理解できていたし、遠坂家の家訓を強く意識していたようだ。
『常に優雅たれ』と振舞う子供達が、身に着ける物を選ばない筈もない。

「いつの間に・・・」

「士郎が家族の買い物に疲れたお父さんみたいに座ってた頃によ。
 次のデートの時には今日みたいに黒一色じゃなくて、少しは明るい服を着るようにね」

はは、耳が痛い。
だがまあ、未だ解けぬ難題たる女性の買い物の長さ、これに苦しむのは男の甲斐性みたいなものだ。
今回は途中でリタイヤしてしまった訳だけども。

「ありがとうな、遠坂」

「いいのよ、士郎を好き放題にいじくるのはわたしの趣味だし。
 旦那に格好良くして欲しいのは妻の望みだもの」

風が強い。
おかげで、今も楽しそうな彼女の横顔が見える。
ああ、それならばいい。
彼女が笑えるなら、今日の苦労も報われよう。

「で、どうだった?」

振り返る、笑顔。

「楽しかった?」

「・・・・・・」

彼女が、ではなく、俺が。
それは――――考えるまでもなく。



「ああ、最高に楽しかった」



何よりも大切な人との、変えがたい一時。

その夜、俺達は幾度目かの恋をした。
























【デートしよう! END】


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「・・・・・・おはよう、アーチャー」

「ああ、おはよう、凛」

「昨日は随分遅かったみたいね」

「ん、あ、ああ」

「あら、遅かったんじゃなくてさっき帰ってきてばっかりなのよ」

「あ、おいジャグ・・・・・・ラー」

「へえ―――――朝帰りなんだ」

「いやまて凛、決してやましい事は・・・・・・その、なんだ」

「どもるくらいならフォローしようとすんな!」







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