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その日、冬木市には違和感があった。




晴れやかな朝を向かえ、食事を摂り、学業、仕事へと向かう人々。
毎日のように繰り返される光景。
各個人ごとに小さな違いはあれど、その歩みに大きく違いはない。
ならば、この違和感の正体は一体どこにあるのか。

その答えは人にある。
一部の識者は気づいていたが、その日に限り冬木の町には多くの異邦人が足を踏み入れていた。
過去に多くの移住者を迎えた歴史を持つ地ではあるが、それにしても多くの外来人が町を歩いている。

ここは、特に観光名所という訳ではなく、何か大きな催しがあるという訳でもない。
ならば何故か、その疑問に辿り着いた者は僅かながらも存在した。
しかし、だからと言ってそれらが日常を変える様な疑問でもなく、この地に住みし者達は何ら変わりない日常を過ごす。
それが一見して害がなく、自分に影響を与えないのならば関心を持たないようにするのがこの国の常だからだ。

だからこそ、その真意に気づけない。
彼らの目の奥にあるモノ、彼らが微かに纏う異常の空気に。




その日、冬木市には違和感があった。























【夜を護りし者】





























夜。
誰もが寝静まった深夜、さざ波の鳴る港に小船から陸へと上がる集団がいた。
人目から身を隠して陸へと上がった彼らは、誰もが黒装束を身に纏い、目だけを布の下から覗かせている。
風体だけでも十二分に如何わしいが、彼らの纏う雰囲気はそれ以上に空気を冷たくさせた。

この夜。
冬木の町は襲撃を受けた。
















数ヶ月前。
極東の地で異常な波形が計測された。

尋常ではない魔力の渦。
そして、この世界には無い筈の異質な波。
これを感知した魔術協会は衝撃を受け、混乱し、事の詳細を確かめるべく議会をうちたてようとした。
しかし、彼等がそれを実際に行動へと移す前に反応は消えてしまう。
この事態に彼らは落胆したが、用意した議会は無駄にはならなかった。
彼らは知っていた。この時、冬木の町で聖杯戦争という儀式が行われていた事を。

数日と経たない内に、ある少女がロンドンへと訪れた。
いや、召還に応じ、呼び出したのだ。
少女の名は『遠坂凛』。
冬木の地の管理者にして、遠坂の家系の正当後継者である。
呼び出した理由は明白だ。
その地で起きた事象の報告、そして『渦』を目の前にしてみすみす見逃した責任。
根源を目の前にして用意された議会は、その矛先を少女一人へと変えて開催された。

結果としては、遠坂凛は聖杯戦争で起こった事をただ報告し、帰っていった。
数十年に一度現れる筈の聖杯が、たった十年で戦争を起こした事。
監督役としてその地に居た言峰神父によるルール違反、それによる聖杯の崩壊、終結。
言峰神父の暴走については、魔術師協会が必勝の構えで派遣した『封印指定』を暗殺した事などと共に、確たる証拠として突きつけられた。
彼らはその報告を聞き入れざるを得なかった。
報告に提出された資料にも破綻はなく、彼らはそれに対して嫌疑を無くさざるを得なかったのだ。
しかし、矛先は突き立てられてこその槍である。

元より、事実など彼らには二の次の事だ。
この議会の目的は、遠坂凛の権威を奪い、一瞬とて『辿り着き』そうになった地の接収にある。
魔術協会の権力者達がこの少女をただ虐げる為に集まる訳が無い。
冬木の地を手に入れた後、一体誰がその利権を手にするか、それこそが議会本来の目的だからだ。
だが、まさにその目論見が実行される直前、一人の老翁が議会に現れた。


現存する四人の魔法使いの中の一人、第二魔法の使い手にして万華鏡の名を持つ魔導元帥。
キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ、その人であった。


彼の者の言葉と提示された条件により、その場は慌しくも収まり、遠坂凛への罰も消失する事になった。
この件は、これにより終結した。




そう、あくまでも表向きには。










場面は冬木の港へと戻る。

全身黒尽くめの集団は、その全員が小さな船から陸へと上がっていた。
彼らは、ある命を受けてここにいる。
その命令とは、『聖杯戦争に関わるモノの調査』。
議会に参加した魔術協会の一部の独断により、数十人の人間がこの地へと派遣された。
その一つがこの集団である。
しかし、調査というには彼らの様子は険がある。
学者や研究者という人材には見えず、纏う雰囲気や、懐に隠した道具から、連想されるキーワードは強盗か暗殺だ。

先ほどの命には続きがある。
すなわち――――邪魔が入るようならば、手段を選ばず、排除せよ。

彼らは、もとより調査などではなく、奪う為にこの地へと足を踏み入れた。




帰りの際にも利用する事を考え、波打ち際に船の固定を行う。
再びここに戻ってきた時には、荷物は増えている筈だ。
沖で待機している船に戻る為にも、彼らは入念に人避けの結界を張った。

彼らの第一目標は言峰教会。

遠坂凛の報告が正しければ、今回の聖杯戦争を暴走させた原因となる。
特に、その教会の神父・言峰綺礼は前聖杯戦争の参加者であり、今回は監督役という立場さえ得ていた。
本人は遠坂凛によって討伐されたとの報告だが、聖杯戦争を深く知っていたであろう彼の住処にはいくらかの情報が残っていると考えられている。
それらの回収が、まず彼らに与えられた任務だった。

言峰綺礼は死亡、教会には新たな管理者はまだ派遣されておらず、行う事はただの空き巣に近い。
あまりにも簡単で、退屈な任務になる―――――

「よお」

筈だった。





黒尽くめの集団が、一斉に背後へ振り向く。
そこには、海に釣り糸を垂らした、アロハシャツがやけに似合う男。
それはまるで彼らがここに来る前からそうしていた用に、魚を釣り上げて脇のバケツへと放り込んだ。

曲がりなりにも、隠密の任務としてここへ来た彼らである。
周囲へ常に注意を向け、神経を張り巡らしていた。
だというのに、彼らはその男の存在に全く気づく事ができず、それどころかおめおめと姿を晒してしまった事になる。

魔術の基本は、隠匿にある。
ただでさえ今回の件は協会の中でさえ声を大にして言える内容ではなく、誰の目にも触れてはならない任務だ。
しかし、それでも彼らの動揺は一瞬だった。
何故ならば、魔術師の隠匿とは『人の目から隠す』だけではなく、『証拠を消す』という事だからだ。
元より、彼等の動揺は見られた事実ではなく、自分達の見過ごしにある。

「っと、随分と好戦的じゃねえか」

夜釣りをしていた男は竿を肩にかけて立ち上がる。
その廻りを、黒尽くめの集団が囲んでいた。
手には、銀色に鈍く輝く刃物が並んでいる。

「かっ! 随分ちゃっちい獲物だなあ、おい」

囲まれてなお軽口を発する男は頭をガシガシを掻くと、釣竿から糸を垂らす。
ヒュン、と何かが風を切る音が響いた。

「こんな安物じゃ満足に魚も捌けねえよ」

そう言った男の釣竿を持つ反対の手には、いつの間にか複数のナイフが握られていた。
黒尽くめの集団に、大きな動揺が走る。
目の前の男の持つナイフが、先ほどまで自分達が手にしていたものだからだ。

黒尽くめの集団の一人、姿形こそ外見で差はないが、リーダーである男が目配せをした。
それを合図に、前後左右から四人の黒尽くめが釣り竿を持つ男へ殺到する。
その男に何かを感じ、早々に消去する事を判断したのだ。
目の前の異質に対して、素晴らしく早い断定である。

しかし問題は、

「遅いな、そんな反応じゃ捌く以前に逃げられるのがオチだな」

その判断が間違っていたという事である。

一瞬のうちに倒れ伏す四人。
男の手には、釣竿に変わっていつのまにか赤い槍が握られていた。

「おーおー、今日は随分と入れ食いになっちまったなあ」

今度は動揺する暇もない。
男が槍を振るい、闇のその赤き残光が線を作るたびに黒尽くめの集団は一人、一人と減っていった。

「まあ、煮ても焼いても食えなさそうなのばっかりだがな」

最後に残った黒尽くめの一人がその言葉を聞き取る。
何が起こったかもわからず、悲鳴一つ上げる間もなく、その男も一瞬で意識を刈り取られた。









同時刻。
闇にまぎれて柳洞寺の山を登る集団の姿があった。
暗いグリーンの服装に身を纏い、草々をかき分けながら寺へと向かっている。
彼らもまた、同じく『調査』を目的としていた。
数で言えば、港にいた集団よりも多い。
彼らはその集団を複数へと分け、山を登っていった。

柳洞寺、この地は、複数存在する冬木の霊地の一つである。
寺の裏にある泉が聖杯召還の儀を行う場所になっており、さらに調べによれば地下空洞にも重要な拠点が存在するという。
地下空洞そのものは崩壊したという話だが、だからこそ証拠隠滅には時間がかかっている。
そこで行われていただろう儀式の情報を集め、可能ならば確保する。
霊脈の一つを確保できれば、後々有利に事を進められる事は明白だった。
その為、グループを寺の確保と地下空洞の探索に分け、彼らは山の中を移動していた。
寺へと向かう者、地下空洞への道を探す者、出来る限り広くに分かれ、彼らは山を覆う。

だからこそ、彼らは気づけなかった。




一人、寺へと向かう男の歩みが止まる。
腰ほどにある草々を鬱陶しげに払い、周りを見回した。
何か違和感がある。
だが、それを明確に思い浮かべる事はできずに、肩に触れた草を払い歩みを再開した。
前へと目を向ければ、頂は登り始める前に見上げたよりも幾分か遠く感じる。
山とは言ってもそう奥地にある訳でもなく、数分で登りきれるだろうと思っていた目測の甘さを呪う。
草々が視線をさえぎり、視界を悪くしている事も遠さを感じる原因なのだろうかと、彼は考えた。
ふと、再び先ほどと同じような違和感を覚える。
違和感が事実に変わった時には、既にに山の頂は遥か高きに身を構えていた。




地表を調べ、物理的、魔術的な痕跡を探している彼女の視界に、小さな虫がうごめいていた。
呪術的な儀式に虫を使うことは少なくはないが、不快なものは不快である。
底の厚い軍用靴でそれらを踏みつけ、嫌な感触を無視して探索を続ける。
ふらり、と視界が歪む。まるで空に浮いているように。
眩暈だろうか。
耳に小さな羽虫の音が飛び込む。
それは迷うことなく目の前で停滞した。
不快だ。ソレが此方を凝視しているように見える。
まるで人間のような仕草で此方を注視して、人間のような形をして、わたしのようなミタメをしている。
キモチワルイ。吐き気がして、わたしははねをフリあげて、めのまえのひとをはらい――――




神経を研ぎ澄まさせていた耳が、小さな声を聞き取った。
まるで悲鳴のようだと、彼はそれを判断した。
しかし歩みは止めない。
それが味方であっても、手柄を分配するのであれば自分にとって邪魔者でしかないと考えているからだ。
だから先ほどの声が助けを求める声であろうが、足を止める理由にはならない。
むしろ足が軽くなった程だ。
ズルリ、と足下に泥がまとわりつく。
ここしばらくの間に雨が降った記録は無い筈だが、山の中で水があるのはそうおかしくはない。
特にこの山には池がある。
だから土がぬかるんでいようと、それが赤黒くても足を止める理由にはならない。
向かう先から、生暖かく、何かが腐った様な臭いが風に乗ってきた。
それが何かの腐臭だと気づいても、足を止める理由にはならない。
耳元で絶叫が響いた。
足を止める理由にはならない。
視界が死体と血液と糞尿と荒野の地獄になっていた、理由、にはならない。
理由、理由が欲しい。足を止める理由が、ホシイ。なんでもいい、助けて、理由が―――――!




「・・・・・・あらあら、随分と可愛くないアリス達ね。不思議の国には馴染めなかったのかしら。ふふふ」










山の中で次々と人が『消失』していく中、正門へ向け階段を上る集団も、また存在していた。
この山に踏み入れた集団の中でも、彼らの目的は単純だった。
つまりは強奪。
柳洞寺の人間全てを洗脳、もしくは抹消し、実質的にこの土地を奪い取る。
霊脈の一つであり、聖杯戦争の重要な拠点である筈のここさえ手に入れば、例え今夜に何も見つからなくとも問題はない。
地形的に見ても防壁を張るのは非常にたやすい。
一度手に入れてさえしまえば、この地は彼らの堅牢な城となりえるだろう。
しかし、


「無粋な客だな。礼儀もなく、ただ騒々しい」


ただその門を潜り抜けるという行為が、事実不可能であるという事を、彼らは知りえなかった。

彼らが進む門の前に、時代錯誤の侍がいる。
剥き身の長刀を月の下に晒した姿は、そこだけが別の世界であるかのように映えていた。

だが彼らの中に動揺はない。
如何に奇抜な姿形をしていようが、魔術的な要素がなければ一般人と大差がないからだ。
ただ、これから行う蹂躙が少し前から始まるだけの事。
彼らは、揃って手にしていた鉄製のトランクを降ろす。

「ほう。ほう、これは面妖な」

開いたトランクからは、数々の鉄屑が敷き詰められていた。
それが、まるで生きているように動き出すと、彼らの体を這い始める。
数分と経たない内に、それは全身を覆った。

「成る程、鉄の鎧か。確かにそれを日本刀では切れぬ。
 重さと圧力で物を断つ西洋の剣とは違い、太刀は人を切るものであるからな」

鉄の塊と化した彼らが、悠々と階段を上がる。
その先頭を進む一人の首から、何の前触れもなく血飛沫が上がった。

「ああ、警告が遅れたな――――そこが境界だ」

それは、当然の様に侵入者への罰を下した。

彼らの中に、初めて警戒が芽生えた。
この鉄の武装は、対人相手に無敵とも言える性能を保有している。
特殊な製法と素材で構築された金属は、刃物どころかショットガンですら傷をつけられない。
中に編まれた術式はあらゆる属性の魔術を通さず、余程の大魔術でもない限りは中の人間に危害は加える事は不可能。
ましてや、あの様な細身の剣でそれが崩される筈もないのだ。

三人。
相手の攻撃を確かめるが為に三人の鉄壁が並ぶ。
同時に仕掛ければ、あの剣一本では身を護りきれない。
一人か二人は犠牲になるだろうが、最後の一人が相手を仕留めればいい。
合図も無しに、彼らは侍へ襲い掛かった。

「秘剣――――」

風の中に、小さな呟きが混じる。
その後には、先ほどと同じ様な姿を地に晒した三人が残った。

今度は不意打ちという事でもない。
彼らは侍を注視していたし、その剣が振り下ろされるのも見ていた。
だが、たった一振りで三人同時に倒されるのは一体どんな手品だというのか。

いや、それよりも武装の下にある体を、どうやって切り裂いているというのか。
彼らには、それだけがどうしても理解できない。

―――それが、糸の様な隙間を名の通り縫うように切り裂かれた等と、気づける筈も無い。

しかし、だからとて彼らには逃走などという選択肢は無い。
倒れた者達の鉄が、残りの者へと移りだす。
辛うじて人型を保っていたものが、何かの動物を模したような形態へと変化していった。
それは、彼らが侍を障害、敵として認識した証でもある。

「なんとも粗雑な気質だが、よかろう。久々の敵意を持った客だ」

侍が、背を見せるように刀を翳す奇妙な構えを取る。

「月下に晒せぬ醜き姿、汝ら即ち魑魅魍魎」

詠う様な前口上。
それは戦いを目の前にして尚、物語の様な流麗さを抱かせる。

「山門の守護者、佐々木小次郎。
 静夜を荒らす外道の衆を、成敗してくれようぞ」

獣が如く駆け上がる鉄の魔獣を、白銀の残光が赤く染めた。










間桐邸。
始まりの三家の一つであるその地には、十数人の侵入者が足を踏み入れていた。

報告が正しければ、既にこの館の主である間桐臓硯は死亡している。
一人息子はこの町にはおらず、娘はいるようだが、小娘一人などどうとでもなる。
魔術師としての格もさる事ながら、既にこの家系は土地に馴染めず磨耗していた。
むしろ警戒すべきは館そのものの防衛機構であり、その為の準備は万全に用意していた。
しかし、いざ踏み入れてみればまともな結界の一つすらなく、洋館はただ薄気味悪いだけの存在。
拍子抜けもいい所である。
彼らの意識はむしろ、希少な魔術品や、聖杯戦争の文献といった利益が手に入るかへと移っていった。
見た目だけの警戒をしながらの、気を緩めた探索。
だからこそなのか、彼らは自分達の仲間が一人、一人と消えている事に気づいたのは、片手の数へ落ち込んだ時だった。

じゃらじゃら、じゃらじゃらと、蛇の喉声が鳴る。

一人。
一瞬目を離しただけだというのに、物音一つなく姿が掻き消えた。

一人。
窓が風で軋む音に気をとられた隙に、軽い音と共に消えた。

一人。
何かが脇を通り過ぎる気配を感じ、視界の隅に黒が走って消えた。

一人。
残った。

「物々しく私の領地へと忍び込んだ割りには、随分と手ごたえがありませんね」

じゃらじゃらと音が体の廻りを這い回る。
今すぐにでも逃げ出そうと微かに残る意識が告げているが、体まるで石化しているかのように動かない。
ああ、そういえばこの国には『蛇に睨まれた蛙』等という言葉が存在していたな、と場違いにも頭に浮かんでいた。

「しかし粗雑ではあるが、誰もが若々しく、歯ごたえがありそうですね」

もはや隠そうともしていないのか、背後に圧倒的な気配が生まれている。
体が感じている恐怖とは違い、その声は美しく、絡まるように首筋を撫でる指先は余りに白く美しい。
だが、それでも体は震えるだけで指一つまともに動かす事はできない。
まだ傷一つなく、自らが鍛え上げた肉体や魔術を使う事もなく、悟ってしまった。
ここに足を踏み入れた時点で、全て終わっていたのだと。

今宵、この時のみ。この地は魔術師の館などというものではなく、

「久しぶりの供物は、中々に美味そうだ」

鮮血に染まりし化け物のハラワタ。
暗黒の神話に語られる、ゴルゴンが巣食う形なき島に他ならなかった。










魔術師殺し、衛宮切嗣。
その記憶は古いが、未だ魔術師の間では名を出す事すら憚られる。
それは魔術師でありながら魔術師を殺すという異名が嫌悪の対象であり、かつ畏怖を持たせるからだ。
協会の理念に抵触しない合理的な――― 一般人から言わせれば非人道的な実験の数々を潰され、残さず殺された。

そして、その記憶を呼び起こすモノがここにいる。

報告に合った、遠坂凛の協力者。
それが衛宮の名を持つ者だと調べが着くのは容易かった。
養子ではあるが、協力者として聖杯戦争に参加したからには魔術師であり、あの魔術師殺しの師事を受けたことは間違いない。
故に彼らが揃えた人材は腕利きの暗殺者であり、失敗時を想定した近接戦闘に優れた魔術師だった。
それが今、衛宮家の廻りを囲んでいる。

一人の男が、その正門を見据えている。
この集団の中でも経験・実力共に優れた魔術師であり、この部隊を統括する人物だ。
既に家の周りを結界で囲んでおり、後は彼の合図だけで数十人の魔術師で同時に攻め込むことができる。
結界は人避け、隔離性、遮断性に優れたものであり、出入りする事は困難であり、かつ中でどんな爆発が起ころうが外の住民が気づく事はない。
如何に魔術師の根城が相手であろうと、圧倒的に有利な陣形。
しかし、彼に油断はない。
魔術師殺しは、魔術師でありながら近代兵器を使用していたという。
それは暗殺という所業ではなく、ゲリラやテロリストを彷彿とさせる手段を多く用いてきたのだ。
如何に戦力差はあれど侮る事はできない。

彼に油断はなく、一分の隙さえ見せることはなかった。


 ――――カシャン


そう、その鈴の音のような、しかし氷の破砕音のような、そんな音を耳にするまでは。




武家屋敷の正門が開き、小柄な影が現れる。
青き衣を身に纏い、白銀の鎧を鳴らし、金色の鬣を流した、黄金に輝く剣を手にした少女。
そう、少女だ。
まだ20に満たない様な、若く小柄な女。
しかし、彼が、いや彼らが感じているモノは、魂を揺さぶられる用な圧迫感。
少女の瞳に見据えられてしまえば、まるで魔術でもかけられたかのように膝をつきたくなる。

・・・・・・王者。

脳裏を掠めたのは、少女からは最も遠い単語。
しかし、尊き黄金の輝きはそれを肯定するかの様に輝き、身体を貫いた。


「貴殿等が何者かは知らぬ」


鈴の音の如き少女の声と、地に突き立つ剣の硬質音が、空を震わせた。


「だが、その目的ならば耳に届いている。夜を荒らし、町の平穏を乱す不届き者の目的ならば」


門の前に、ただ一本の剣を前にして立つ。
それだけで、彼らはまるで難攻不落の巨城が目の前に聳え立つ様な威圧感に苛まれた。

しかし彼らとてただ立ち尽くしている訳ではない。
目の前の敵が如何に強敵であろうが、まともに戦う必要はない。
元より彼らの目的は衛宮の名を持つ者であるからだ。
気づかれない様に合図を送り、予定通り数人を侵入させる。
やるべき事を成し、早々に去ればいい。


「その目論見は叶わぬ」


心臓が止まる。
透き通った碧眼に見据えられただけで、心の内全てが見破られたかの様な気分に陥った。

早く。
早く事が済めばいい。
標的さえどうにかできれば、いや、例え失敗したとしても構わない、退くことができるなら。
このまともではない相手から離れられるなら、この畏れをどうにかできるなら。

だが、耳に届くのは不可視の壁に戸惑う声ばかり。


「汝等の目的はただ一つ、この私を退けん限り果たされぬ」


再び地より引き抜かれた聖剣が、路上を黄金に染め上げる。
決して強くはない。がしかし、一度見てしまえば逸らす事の出来ない輝きを。


「参られよ、強奪者。この輝きが潰えぬ限り、夜を侵す事は出来ぬと知れ」


その一言を皮切りに、居合わせた全員が弾かれた様に少女へと殺到する。
抑えきれぬ高揚と、隠し切れぬ絶望を胸に。
ただ、敗北を知る為に。ただ、一騎にして当千たる剣舞を目に焼き付ける為に。


誰にも届かぬ、夜を切り裂く鋼の音が、打ち鳴らされた。










この任務は証拠を残さない事が第一とされている。
魔術師が魔術師である為の隠匿であり、そしてある立場の人間を守る為だ。
前者としては魔術を『薄めない』為の対処である。
そして後者は、どこにでも見られる権力者の保身に他ならない。
しかし、決して隠密ではない。
悟られる事は構わない。何故なら、それが広まる前に隠してしまえばよいのだ。
時には記憶操作であり、時には人間の存在そのものを。
今回についても、その『隠匿』という方針に変わりはなかった。
ただ、それが街一つが対象であるという点だけを除いて。

冬木中央公園。
いまだ目に見えぬ遺恨を残す空間に、複数人の魔術師と、一匹の『獣』がいた。
それは馬のような細長い顔つきをしつつ、狼のような長い白毛を全身に流した生物。
地に伏せていて魔術師達の二倍程超の高さを持つソレは、切れ目の様な赤い瞳をただ無感動に開いている。

ソレは、この任務が致命的な失敗をした際の『保身』であり、証拠隠匿の為に用意された道具。
ただ素早く、力強く、硬い。
忠実に命をこなす為だけの存在。
命を下された時になって初めて、比喩ではなく心臓が動き出す。
与えられている命は唯一つ。より魔力のあるものを、食欲ではなく命令に従い噛み砕き、消化する。

魔術師にとって最も粗野で単純な作りにして、最も厄介な手合い。
特殊合成金属で生成された体毛、そして硬質的な外皮は、物理的な手段では傷一つ着かない。
まともな知恵も理性もないが、故に、精神的な魔術は通用しない。
身体能力に置いては、大型の肉食動物を軽く凌駕している。

起動してしまえば、敵味方の区別なく魔術師全てを処分するだろう。
それは『獣』起動させるべく待機している彼等とて例外はなく。

だがしかし、その例外は圧倒的暴力の前に現れる。


「ほう、懐かしい気配に来て見れば・・・・・・随分と駄作を用意したものだ」


底冷えする様な音を聞き、それが声だと認識した時、彼等の上には墓標が突き立っていた。


「―――下らん、やはりこの程度か。
 この様な粗雑な殺意しか持てぬ輩に期待などはしていなかったが」


不評通りの映画を見てしまったように、黄金のサーヴァントは容易く死体を築き上げる。
嘆息を吐く口元は不平に歪み、しかしその眼は狂気の残滓を光らせる。
禍々しい紅の瞳が捕らえるのは、起動鍵を失った動かない機械。


「・・・・・・悪くない瞳だ。ただソレだけの為に創られた、混じり気の無い、真性の道具よ」


自らを制していた魔術師等が骸になって尚、『獣』は微動だにしていなかった。
このまま放って置けば、魔力が尽きるまでこの場を動かず、ただ亡骸と成り果てるだろう。


「よいぞ、粗相を許そう」


しかし、その制約は赤き眼の前に容易く崩される。



酸素を吸収する。
心臓を稼動し、沈殿していた血液へ混合する。

『獣』が立ち上がる。
狼を思わせる体躯は、それだけで5メートルを超える高さから黄金を見下ろした。


―――疾走。


逐電してあった魔力を全身に走らせ、関節部内で爆発を促し回転速度を上げる。
物理法則を捻じ曲げた加速は初動から最高速度を生み、秒を待たずして対象に食らいつく。

だが、その地上最速を超えた疾走は、最古にして英雄の王たる彼には遅すぎた。


―――!


『獣』の口から肺を押し出された酸素が吐き出される。
ソレが生まれて初めての役目を実行しようとした直前、何処からか現れた鎖がその行動を停止させたのだ。
神話級の英雄でさえ捕縛する天の鎖は、凡百の魔術師が作り出した人工生物程度では軋み声すら上げなかった。
しかし、『獣』は止まらない。
鎖を壊せずに、尚進もうというのであれば崩れ始めるのは肉体。
外装は剥がれ落ち、口は裂け、四肢を砕きながらも『獣』は一歩ずつ前進する。

王は、それをただ懐かしそうに眺めていた。


「痛みを知らず、ただ命に肉体を捧げる獣、キメラ。
 思い出すぞ、あの愚かな家畜もまた、神々の道具だった」


『獣』は進む。
肉体のいくらかは欠損し、四肢と呼ぶには少なくなった体を這いずらながらも前進する。


「しかし如何に自身の存在を弁えていようが、所詮は三流の業よ。
 その程度の性能では我の膝元へ置くに叶わぬ」


ほぼ胴体だけの形になりながらも、『それ』は前進を続け、ついには対象の目の前までたどり着いた。
顎の関節部位の筋肉を稼動し、唯一保有している殺傷武器である牙を剥き出して、対象を挟み込み断裂によるショック死、もしくは出血多量を誘い生命活動を停止させる。
その最初にして最後の役割を果たす為、失血による低下した視野で対象を再確認し、動作を停止した。

目の前には、大嵐が渦巻いていた。


「真にして、純なりし武具というものを見せてやろう。
 これを土産に、いずれ我の道に現れし時は唯一を獲得する事だ」


暴風を持った輝きに、視界が灼かれ堕ちる。
『それ』は、役目を終えた道具らしく、塵一つ残さずに大地から蒸発した。










そして、最重要人物。
少女の名は、遠坂凛。
冬木のセカンドオーナー、聖杯戦争の御三家の一つにして、遠坂家の正当後継者。
この冬木市強襲の始まりとも言える彼女の邸宅には、数人の魔術師達が現れていた。

彼等は、他の地を攻め込んでいる者達とは何かが違った。
人数にしても片手で数える程しかおらず、格好も特に隠密を意識した物ではない。
ただ、纏う『気配』だけが違う。

その存在は、魔術協会に置ける闇の一つ。
特質的、特異的な魔術を有し、協会が貴重と認識した魔術師に付けられる最高級の名誉にして厄介事、封印指定。
学ではなく才能で一代限りの魔術を持つが故に、腐り落ちる前に保護する名目で送られる執行者。
彼等は、そんな魔術協会の中でも嫌悪される人物達に他ならない。

貴重な魔術師の保護、時に禁を破る者の元へと派遣される彼等が何故ここにいるのか。
それは聖杯戦争の生存者とは言え一人の少女を警戒している訳ではなく、主に宝石の翁を警戒しての事だ。

遠坂凛の罰を消失させる代わりに、気まぐれな魔導元帥が提示した条件は破格なものだった。
魔術協会としてはその最高にして最悪の条件を飲みつつも、根源に至りかけた冬木の地も欲していた。
しかし、遠坂凛をどうにかしたのでは翁の条件は果たされず、黙認してしまえばその地は手に入らない。
ならば、両方を手に入れよう、それが結論として出た。
遠坂凛に罰を与えず、冬木の地を手に入れる。
そんな子供の我侭の様な話は、あっけなく適える事ができるのだ。
つまりは、魔術協会として遠坂凛を許し、バレずに冬木の地を手にしてしまえばいい。
結論が見つからないのならば他へと求める、そんな魔術師らしい答えだった。

もし、事が露見したとしても問題はない。
最初からあるの魔術師個人による暴走と筋書きは出来ているし、トカゲの尻尾は容易く切れる。
遠坂凛を保護、ないし抹殺さえしてしまえば、後は自動的に魔術協会へ土地が流れるのだ。
約束は果たし、土地も手に入れる。
どう転んだとしても両方手に入る様にできていた。

そう、遠坂凛をどうにかする事ができるならば―――――






深夜、隠れもせずに道路で待機していた彼等が立ち上がる。
他の強襲と時を同じくして、彼等もまた任務を開始していようとしていた。

他の地へ攻め込んだ魔術師達と違い、彼等に隠密や暗殺という考えは無い。
真正面から進軍し、罠を打ち破り、圧倒的な火力で叩き伏せる。
それだけの道具を協会から支援され、それだけの実力を彼等は持っている。
如何に才能に満ち溢れた新人であろうが、彼等を相手にして防衛も逃走も不可能。
変えようのない事実として、それはあったのだ。

そう、ありえない筈の存在がそこになければ――――






乾いた地を叩く音が、彼等の後方から聞こえた。
まるで猫でも塀の上から降りた様な、小さな音。
だからこそ、それが赤い外套を身に纏う長身の男と認識するには時間がかかった。





我が骨子は 捻 じれ狂う。
「――――I am the bone of my sword.






何の意味も無い、小さな呟き。
それが紡がれた時、周りの風景は一変した。

果ての無い、ただひび割れた大地が続くだけの荒野。
炎の様な赤が空を多い、生き物の気配一つ感じる事のできない空間。

それは、攻撃的でも防衛的でもない、ただ見たそのままの世界だった。






彼等は、封印指定を施される魔術師を専門とする執行者である。
故に、それが理解の外にある事象だったとしても、まず混乱する事はない。
そしてこの時も、何時も通りに冷静に場を捉え、数々の推測と推論を導き、混乱した。

該当無し。
彼等の知る限り、このような現象を引き起こす方法を体験した事はない。

幻覚、洗脳、映像投影、瞬間転移。

まず幻覚ではない。
全ての五感、魔術師としての第六感を用いてもこの世界に異常はない。
もちろん執行者全てがその手に対して得意な者ではないが、そちらを専門とする者はいる。
この場にいる全員が同時にかかる事はまず無い。

そして、洗脳でもない。
一度に、そして全員の全感覚を狂わすだけでなく操作するなど、伝説級の道具や魔眼でも使わない限り叶えられない。

映像投影、この中では最も実現可能な方法にして、これもまた答えではない。
ある程度の環境さえ整えば、ここではない場所の映像を見せる事など酷く簡単だ。
だが、踏みしめている大地や、肌に感じる焼けた空気は、映像では味わえない感覚である。

瞬間転移が可能なのであれば、それはもはや魔法の所業である。
擬似的な転移、例えば風や土の魔術を用いてあ移動を瞬間転移に見せかける程度なら可能かもしれないが、そんな魔術的な動きがあったのならば当に察知している。

ならば、可能性全てを用いている場合。
確かにそれだけの複合的な魔術ならば、感覚全てを誤魔化しきれるかもしれない。
しかし、これだけの魔術を行うとなると、瞬間契約並の詠唱に莫大な資材、数十人の腕利き魔術師が必要になる。



一つ、これら全ての疑問に答えられる魔術がある。
それは最も名の知れた魔術にして、最も実現不可能な魔術。


――――赤き外套を纏いし背中が、乾いた大地に立ち上がる。


世界を侵食し、固有者の心象風景で新たな世界を創り出す最も魔法に近い魔術。


――――鍛え抜かれた体躯、鋼の様な浅黒き肌、赤を残す白髪。


名を、『固有結界』


――――桁外れの魔力。力が有る故に理解できてしまう実力差を見せ付けて、


その世界の中心で、男はただ不敵に笑った。






「あら、久しぶりの割りにはうまくいったじゃない」

一目で判る程の異世界の中、場違いな程に楽しそうな声が鳴り響く。
それは赤い空の何処から現れると、男の腕の中へふわりと降りた。

「失敗する筈がない、俺とお前の二人なんだから」

男の自身に、女は満足した用に笑う。
それは長年連れ添った夫婦のようでいて、激戦を生き抜いた相棒のようでもあった。

「それにしても一介の魔術師相手に執行者5人、ね。
 しかも随分な顔ぶれじゃない」

「見覚えがあるな」

「まあ、アンタは現場で会ったんでしょうね。
 それにしてもこいつらが派遣されたって事は、動いたのは一人や二人じゃないわ」

「全部読みどおりか。
 まったく、確かに釣れたがやり方が強引だぞ」

「裏から政略的にこそこそチクチクっていうのも好きだけど。
 やるなら集めてまとめて一網打尽よね」

どこか遠い所で会話されているような感覚の中、彼等の混乱は頂点に達していた。
常識外の魔力を持つ者が、二人。
極みとも言える魔術、固有結界。

歴戦を有し、数々の魔術師を捕獲した彼等をして、恐れを抱かせる程の相手。
だが、その目的が読めない。理解ができない。

何故、伝説級の実力者がこんな極東の地に居るのか。
何故、この襲撃を予想できていたのか。
一体何故、この固有結界は『何も起こらない』のか。

「・・・・・・判らない、って顔をしているわね。坊や達」

女が、魔女へと笑みを変える。

「ここはね、わたし達の世界。
 別に何があるわけでもないわ。
 破壊も、再生も、ましてや剣一振りすらない。
 ここはただ元の世界から隔離されているだけ。
 入ることも、出る事すらできない、断絶世界」

男の手に、白と黒の双刀が、女の手には七色に輝く宝石の剣が現れた。

「そう、貴方達がここを出て成す事を成したいなら、やる事は一つ。
 判りやすく、とても単純なルールでしょう?」

続けて運用されている魔術ならば、術士を倒せばいい。
確かに簡単だ。
理解するだけなら、という意味だが。

「じゃあ、早速始めようかしら。
 夜はそう長くないもの。
 では一つ、宴を始める前にこの世界の主に一言頂こうかしら」

魔女の一言を切欠にし、騎士がその前へと立ちはだかる。

「一つ、難題をやろう。
 周りに広がるのは無限の回廊、目の前には難解な強敵だ。
 故に、君等へ用意出来る選択は一つだ」

交差した双刀が、硬質音で砕け、その長身を表す。

「砂塵に埋もれて、溺死しろ」

鋼が間隙に鳴き、血潮が衝撃に沸き立つ。
今宵、この場に、誰も居ない、誰にも気づかれない最後の戦いが、始まりを告げた。








そして誰も知らない戦いが、誰にも知られずに終結する。

この時、この夜の静寂は、英雄達が護っていた。















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あとがきという名の補足

・何で皆して迎え撃ってるの?
ジャグラーさん首謀の計画です。
不安の芽は早めに潰して置こうって事で。
色々な利権やおこぼれに預かろう、って奴は少なからず居るでしょうからー。
何か起こる前にまとめて潰して置こうっていうのが今回の目的。
多分こんなことが今回に限らず何回か起こってる。

・何で士郎とか凛とか出てこないの?
寝てます。
というか基本的にセイバーやアーチャー等の意向で彼等には内緒にしてます。
もちろん遠坂さんは気づいてますけど。

・最後の固有結界っぽいの何?
アーチャーとジャグラーさん共同制作の結界です。
アーチャーを基盤にしてジャグラーが管理した別世界。
別に剣は無いし特殊能力的なものも無し。
アヴァロン程強力じゃないけど引きこもる時なんかに最適です。
イメージとしてはアーチャーがPCのハード、ジャグラーがソフト的なもの。
オリジナルというかなんというか、特に深い意味も無く出してみちゃった。

・何か一言
まあホロウの『ブロードブリッジ』がやりたかっただけ。
随分と規模縮小ですが。大人気ないギル様は除いてね!

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ランサー 「あーくそ、これで最後だっ!」

ジャグラー 「ちょっと、そこに積まないでくれる? ただでさえもう部屋一杯なんだから」

アーチャー 「大の大人を数キロメートルという距離で運んでいるのだ。少しは労って欲しいものだが・・・・・・」

キャスター 「甘い事は言わない事ね。私達だってこの人数の魔術師全員を洗脳・記憶操作するんだから対した労力なのよ。相変わらずアイツは役に立たないし!」

ライダー 「ですから私が貯蔵すると言ったのです。これだけ居れば一日一人吸っても一年近く持ちます」

セイバー 「大量の人間が貯蔵されているのもシュールな光景ですが、というか間違いなく吸血鬼の館ですね。サクラが泣きますよ」

ジャグラー 「あーもう、集中してるんだから突っ込ませないで! っていうかアーチャーとライダー手伝いなさい!」

ライダー 「手伝ってもいいですが・・・・・・私の魔眼は強制力はあっても持続性がありませんよ?」

アーチャー 「すまん。判ってはいると思うがそちらは完璧に素人だ」

キャスター 「ならランサー! 影の国で得た魔術、人身を惑わすのに決して不得手とは言わせないわよ―――!?」
ボン
ランサー 「あ、オレ天才バカの食い残し片付けてくるわ・・・・・・」 ※ボン→ボンボン

ジャグラー 「あ、こら逃げるな!」

? 「わ、びっくりした」

セイバー 「おや・・・・・・リーゼリット?」

リズ 「こんばんわセイバー」

セイバー 「夜というかもうほぼ夜明けですが・・・・・・それはどうしたのですか?」

ジャグラー 「うわ、また増えた」

リズ 「わたしたちで倒した」

セイバー 「“わたしたち”ですか。イリヤは護衛を断っていましたが、この人数を二人で?」

リズ 「そんな感じ」

ジャグラー 「ふーん・・・・・・」

キャスター 「ほら、手を止めるんじゃないの!」

ジャグラー 「わかってるわよ!」

ランサー 「へい、瀕死の魔術師お待ち!」

ジャグラー「うるさい!」
キャスター


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