〜おまけ 仕事前の夕食中〜 「そういえば三人はどうしたのよ?」 開いている椅子を見て士郎に問いかける。 ウチの家族は五人。 残り三人の所在をわたしは知らなかった。 内訳はセイバー、上と下の兄妹である。 「あー、上のはどっかの工業大学行ってるらしい。 なんだか気になる教授の講義があるとかで・・・朝っぱらから出かけちまってる」 「ふーん」 ウチでは珍しい話ではない。 あの子はわたしの子とは思えないほどに機械関係に強く、そして経済、経営なんかに興味まで持っている。 従来資金繰りに最も苦しむという遠坂の歴史を覆すかもしれないホープなのだ。 ちなみに、部外者が他の大学まで足を運び、その講義を聴講するなど普通の人にとっては珍しい事だろう。 それが同じ教授であったり研究者であるならば話は別だが、若いだけあってウチの子にそんな肩書きはまだない。 なにしろ、 「まだ10歳なのにね・・・」 「ああ・・・正直手が掛からないのが逆に不安でたまらないぞ」 曰く、聴講とは言っても専門的知識が足りないので、流石に完全理解とはいかないらしい。 だがその人物の熱意であったり、研究テーマ。 そしてその人独自の理論だけでも把握できれば、十分に満足できる時間を過ごせるそうな。 ・・・本当、逆の意味で将来が心配である。 「で、下の方は?」 下の娘の年齢は7歳。 兄の異質ぶりに反して、性格も才能も凡庸的。 魔術回路もそう多い訳ではなく、属性も五大元素系統ではない特殊系。 ただ、ある事にだけ興味と熱意を注いでおり――― 「変わらず、だ。 宝石のじーさんに引っ付いてるぞ」 宝石の翁、万華鏡の名を持つ最高の魔術師にして魔法使いである魔道元帥ゼルレッチ。 そのわたし達、遠坂の大師父に初めての対面で一目惚れし、あまり返ってこなくなったストーカー娘である。 「このまえよくわかんないお土産見せられたぞ。渋い声で話す猫とか」 「・・・今度は一週間くらい家に居るように言っといて」 まったく、我が子ながらまともな幼児時代を過ごすつもりは全くないらしい。 「で、セイバーは?」 「あー・・・セイバーはだな」 何故か士郎が言いにくそうに頬を掻く。 どうやら照れているようだが、どういう反応なのだかよくわからない。 「あれだ、遠坂が久しぶりに家にいるって言ったら、外泊するって出てった」 「む、なんでよ。久しぶりに会うっていうのに」 「えーと、な。 今日はちょうど子供もいないし、最近遠坂ともずっと会えなかったんだからって・・・」 気づいて、自分も頬を染める。 ああつまり、 ―――わたし達を久しぶりに二人っきりにしてくれたわけだ。 「・・・セイバーに感謝しないとね」 END
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